アルバロ・ロドリゲス
レアル・マドリード:2023〜現在
プロフィール
2022-23シーズンの終盤、カルロ・アンチェロッティ監督(レアル・マドリード)の構想入りを果たしたのがアルバロ・ロドリゲス。レアル・マドリードのアカデミー出身選手が彼ほど強いインパクトをトップチームに与えたのは久しぶりのことだ。
カルロ・アンチェロッティ監督は言う。
「彼のクオリティーは稀有なものだ。彼の高さは重要な武器になるし、ボールをうまく扱える。しかもクレバーだ」
アルバロ・ロドリゲスは2004年7月14日、スペイン生まれ。父であるコキトこと、ダニエル・ロドリゲス・リマはウルグアイ代表でもプレーした元プロのサッカー選手である。
6歳の時、地元の『CFグローバル・パラモス』に加入。その後、ジノーラFCを経てレアル・マドリードのアカデミーへ2020年から加わった。
『フベニールA』(U-19)で頭角を現した彼は2021年10月24日、レアル・マドリード・カスティージャ(レアル・マドリードのBチーム)の一員としてプロデビュー。著しいパフォーマンスを披露し続けるアルバロ・ロドリゲスに目をつけたアンチェロッティ監督はトップに招集し、2023年1月3日の『CPカセレーニョ』戦(コパ・デル・レイ)でプレー機会を与えた。リーガ・エスパニョーラに初めて姿を現したのは2023年2月19日(◯2-0CAオサスナ)。続く2月25日のアトレティコ・マドリード戦(△1-1)では早くも、ヘディングシュートでファースト・ゴールをマークした。
ウルグアイ代表
スペインで生まれ、ウルグアイ人の父を持つアルバロ・ロドリゲスはU-18スペイン代表としてプレー。しかし2022年8月22日、将来的にはウルグアイ代表としてプレーすることを正式に表明し、現在はU-20ウルグアイ代表として活躍している。
テクニカル分析
アルバロ・ロドリゲスは193センチ、82キロの左利きのプレーヤー。見た目は細身だが、その体には驚くべき力強さを宿し、コンタクト・プレーで遅れを取ることはほぼない。しかも技術も高く、デュエルでは圧倒的な勝率を誇る。
彼のプレーを特徴づけているのは非凡なボール・ハンドリング力と力強さ。しかもスプリント能力も高いため、モダン・サッカーでは減少しつつある「左利きの左ウイング」としてかつてはプレーしてきた。それでも彼はクロスを上げるだけでなく、ゴールを決める才能を発揮。そうした彼の才能に惚れ込んだ指導者は彼のポジションをペナルティーエリアやゴール正面へと近づけ、サイドから徐々に離していった。
技術や身体的な面ばかりが注目されるが、アルバロ・ロドリゲスは戦術的なセンスにも恵まれている。巧みなポジショニングと駆け引きによって相手にとって危険な状況を作り出せるのだ。対峙することになる相手のセンターバックを引き出してゴール前にスペースを生み出しつつ、ゴールを狙い続ける。同時に、空けたスペースを味方に使わせることにも長けており、適切なパスを送ってチャンスを生み出すこともできる。
得点力を買われてセンターフォワードに起用されることも多くなっているが、試合展開によっては慣れ親しんだウイングのポジションに入る。スピードと優れたボール・ハンドリング能力を持つアルバロ・ロドリゲスにとってサイドは持ち味を発揮しやすい場所でもある。スペースのある状態でボールを運ぶ彼をストップするのはDFにとって至難の業である。
彼のボール・ハンドリングをもう少し詳しく分析していこう。
得意の左足にボールを収めた彼はフェイントとタイミングを駆使して相手をコントロール(上写真)。わずかなスペースしかなくても繊細なタッチで相手を抜き去れるため、先手を取られまいとする相手は焦って足を出し、アルバロ・ロドリゲス(39番のRodriguez)の術中にはまるのだ。
リーチの長い彼は相手を背負ってのプレーも難なくこなす。とりわけ『ガンベタ』を呼ばれる足のインサイドにボールをピタリとくっつけて180度回転するフェイントによってたびたび相手を軸にしてターン。DFから遠い足でボールを扱われれば、なかなか足は届かない。
高いサッカー・インテリジェンスを兼ね備える彼は自らゴールを奪うだけでなく、チャンスメイク能力とアシスト力も非凡。「抜いて来る」と予想して身構える相手の裏をかいてパスを送って味方をゴールへと向かわせる判断も優れている(上写真)。
アルバロ・ロドリゲスの視野の広さとパス能力の高さはカウンター・アタックの際にも発揮される。中盤でパスを受けた彼は素早くターンして周囲をルックアップ。自分よりも優位なポジションにいる味方へとボールを送って攻撃を加速させる。無論、無理なパスに走ることはなく、状況に応じてスローな攻撃も選択できる。
フィニッシュ・パターンとしてよく見られるのが左足のインサイドから放たれるもの。強烈、かつ正確なシュートでゴールを射抜く。またセットプレーでは高さを活かしたヘディングシュートでゴールを奪える(下写真)。高さが際立つのだが、アルバロ・ロドリゲス(39番のRodriguez)のポジショニングの良さを評価する声も多い。
ディフェンス面での持ち味
193センチの身長と長い脚はディフェンス面でも武器になる。セットプレーであれば長身を活かして制空権を握れ、「1対1」の場面では長い脚の守備網から逃れるために相手は通常よりも大きな動作が必要となる。決して抜きやすい相手ではない。守備のデュエルで見せる強さは彼のストロング・ポイントでもある。
俊敏性と長い脚を有するアルバロ・ロドリゲスは、アタッキングサードやミドルサードにおいて大きな「障害物」として機能。第1プレッシングラインに入った時でも第2プレッシングラインに入った時でも、相手のボールをカットする姿が頻繁に見られる。インターセプトのスペシャリストと呼ぶ向きもあるほどだ(下写真)。俊敏性と長い脚を活かした守備範囲を彼自身も把握しており、ボールの位置に応じて奪えそうなエリアへとポジショニングを修正するクレバーさも合わせて持つからこその芸当だろう。
センターフォワードやウイングとして起用されている以上、アルバロ・ロドリゲスが期待されているのは攻撃面、特に得点である。しかし、彼のボール回収能力を見落とせば、真の能力を見誤ることになる。アタッカーである彼がボールを奪えば、即時攻撃につながるのだからチームが被るメリットは大きい。実際の試合でも彼はカウンター・アタックの起点にたびたびなっている。
またアルバロ・ロドリゲスは守備に対する意識も高い。相手が攻撃を開始したならばすぐに反転して帰陣(下写真)。持ち前のスピードを活かして守備に加勢する。「ボールの奪還=攻撃の芽」ということを理解しているのだろう。
ベストなポジションは?
ウイングやサイドハーフとしてプレーしてきた経験は選手としての幅を広げる上で役に立っているようだ。さらに、高いポテンシャルを持つからこそ、ある議論が巻き起こる。それは、アルバロ・ロドリゲスの最適ポジションはウイングなのか、それともセンターフォワードなのか、というものだ。
彼をサイドに配置した時の破壊力は実証積み。マーカーを置き去りにしてチャンスを演出するプレーに魅力を感じる者は少なくない。「スピードを活かすならばサイド」という意見にも一定の説得力がある。
仮に彼が「4-3-3」システムの左ウイングに入って左サイドバックの攻撃参加を促すのであれば、タッチラインから離れてライン間でボールを受けるようにするだろう。
確かに彼をウイングに起用した時のメリットは分かるのだが、失うメリットのほうが大きいという意見も少なくない。ウイングに起用すれば、レアル・マドリードは「背番号9」を失うことになるからだ。彼ほどの得点力を期待できるストライカーはなかなか見つけられない。アルバロ・ロドリゲスのポテンシャルを最大限に活かせるのはセンターフォワードであり、チームに最大のメリットを与えられるのも9番としてなのである。
18歳の彼には輝かしい未来が予見されるが、まずはフィジカル面の強化が先決か。ボルシア・ドルトムント時代のアーリング・ホーランド(現在はマンチェスター・シティ)と同様にフィジカル面を整えられたならば、さらなるゴール量産が期待できる。
現在のアルバロ・ロドリゲスはまだ十分なプレー時間を得てはいない。しかし、フィジカルの強化さえ進めば、いずれワールドクラスのストライカーになることをさまざまなデータやプレーが明示している。
翻訳:The Coaches’ Voice JAPAN編集部