ガビ
FCバルセロナ:2021~現在
プロフィール
2004年8月5日生まれのガビ(パブロ・マルティン・パエス・ガビラ)は2015年、ベティスの育成部門からFCバルセロナの育成部門へ移籍。2021-22シーズンのヘタフェ戦(8月29日)にトップデビューし、12月18日のエルチェ戦で初ゴールを決めた。
急速な成長を見せるMFはすぐに代表初キャップも記録。しかも、スペイン代表としてその名を刻んだのはリーグ戦での初ゴールよりも前の10月6日だった。UEFAネーションズリーグの準決勝(対イタリア)に出場した彼は17歳62日という最年少出場記録も樹立。2022年6月5日には同じくネーションズリーグのチェコ戦で得点し、最年少得点者ともなった。
代表にデビューさせたルイス・エンリケ監督は言う。
「まだ3、4回しか見ていないが、彼は将来、バルセロナだけでなく代表チームにとっても非常に重要な選手になれると確信している。年齢は関係ない。彼は十二分に準備ができている。彼が見ている物(視界)が好きなんだ」
プレー・スタイル
主に、「4-3-3」システムのシングル・ピボットの前に位置するインテリオールでのプレー。右利きの彼は左右でプレーできるが、どちらかと言うと右でのプレーを好む。また「3-1-4-2」システムでもインテリオールでプレー。時折、ウイングとしてプレーすることもある。
ビルドアップの段階では、相手守備ブロックの内側に留まってボールを受けられるスペースを探して動き回り、積極的にビルドアップに貢献しようと試み。「3人目の動き」で相手のプレッシャーをかいくぐる戦術理解度の高さも光る。相手陣内に入ると、さらにガビ(30番のGavi)は輝きを増す。相手のプレッシャーを受け流すような体の向きにするのがうまく、非凡なサポート能力も目を引く(下写真)。また、スムーズな『コントロール・オリエンタード』(方向づけしたコントロール)や無駄のないドライブ能力も彼の価値を高める。
ビルドアップ時の彼は右サイドにステイ。チームメイトとの距離感を維持するためにオリジナル・ポジションを守るようにしている。同時に、後方に味方にパスコースを提供するために異なるレーンに立つように務める。
主な武器
彼の武器は技術だけではない。豊かなイマジネーション、スピード、クレバーさを兼ね備え、正確なパスをスピーディーに出せる。相手にボールを奪われる回数が少ないのはこのためだ。
攻撃を創造する局面に入ると、彼はプレーにスピードを与える。受け手の足を止めないように出せるパス能力がそれを可能にする。また、受け手の足元へピタリとパス、あるいは受け手の前にあるスペースにパスに関する判断にも優れている(下写真)。
パスだけでなく、「1対1」でも強さを発揮。一見、簡単に見えるチェンジ・オブ・ペースだけで相手を置き去りにして攻撃をスピードアップさせられる。また、マークする相手の足が届かないような場所にボールを置くと同時に体をターンさせて加速でき、コーディネーション能力の高さをうかがわせる。
チームメイトとの高い連動性と個の強さをバランス良く使えるガビだからこそ、複雑な状況も打開できる。しかも、浮き玉を走りながらアウトサイドでコントロールするなど、奇抜なアイディアの持ち主でもある。だから、多くの選手にとって困難な状況も彼は難なく乗り切れるのだ。
課題
彼が大きな潜在能力を秘めていることに疑いの余地はないが、相手ゴール付近でのより大きなインパクトを期待する声は多い。ゴールやアシストを求められているのだ。キャリアが浅いのは事実だが、期待に応えているとは言い難い。年齢と試合数を重ねる中でインテリオールとして求められる水準をクリアする必要があるだろう。
また、空中戦も改善を要するプレー分野だ。173センチと小柄ではあるが、より厳しく競り合うことで「1対1」での勝利数を増やせるだろうし、勝てないまでもこぼれ球を拾うことでポゼッションを再開することが期待されている。
コメント
「彼の年であのようなパフォーマンスをするのは普通ではないと思う。彼がやっていることは普通のことではない」ルイス・エンリケ監督(スペイン代表)
「クオリティーさえあれば、いつ生まれたかは関係ない」ディディエ・デシャン監督(フランス代表)
「彼は最高のレベルでプレーし、違いを生み出している。技術的、身体的なクオリティーを持ち、成功し続けるためのすべてを備えている」シャビ監督(FCバルセロナ)
FCバルセロナでの役割
18歳になったばかりのガビだが、『カンテラ』育ちらしくバルサの「4-3-3」システムにしっかり馴染み、インテリオールとして存在感を放っている。サイドを変えるためにパスの方向を変えるタイミングに天賦の才をうかがわせる。そしてチャンスと感じれば、インサイド・チャンネルに潜り込んでパスを受けて攻撃を前進させる。ウイングとセンターフォワードの間に割って入ってチャンスも作れる。
彼のインサイド・チャンネルに入る動きが効果を発揮するのは相手の守備陣形が整って味方の選手たちが動きにくいシーン(下写真)。ガビがインサイド・チャンネルに入ることで相手DFに誘いをかけ、動けば他の選手がフリーになり、動かなければガビがゴールに迫れる。この動きが、サイドバックがオーバーラップを仕掛けるスペースを作るケースもある。あるいは、インサイド・チャンネルに入るガビのプレーは将来、FCバルセロナの看板攻撃パターンになるかもしれない。
FCバルセロナのサイドバックはそれ以外の局面でも恩恵を被っている。ガビはサイドバックのオーバーラップを懸命にサポートし、相手に前進を阻止された時にはボールの受け皿となっているからだ。
エア・バトルでの消極性を課題としたが、守備に対する意識は高い。それは、ルイス・エンリケ監督がポール・ポグバやマルコ・ベラッティのマーク役をガビに任せたことからもうかがえる。
強度の高い守備やコンタクトのうまさは非凡なサッカー・インテリジェスに由来すると指摘する専門家は少なくない。また、彼は努力家であり、献身的なランニングをいとわず、フィールド上のあらゆるエリアに顔を出して相手に寄せてボール奪取を試みる。
また、ハイプレスの際にも洞察力の良さが感じられる。ビルドアップしようとする相手の「次」を読み、ファーストタッチを狙って奪いに行ったり、パスコースを消したりして簡単にはビルドアップを許さない。
インテリオールを主戦場にするガビだが、「4-3-3」のウイングや「4-2-3-1」では「3」のワイドを務めることもある。ただし、タッチライン際にとどまるのではなく、中に絞ってインサイド・チェンネルでプレーすることが多く、ガビが空けたスペースをサイドバックがオーバーラップして利用。また、ダブル・ボランチの支援を受けられる場合は高い位置でプレーすることが多くなり、ライン間でボールを受けて長所を発揮する。